恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
私の知っている尾崎竜也は医師免許をとって3年目の27歳、

関連病院から救急外来に1年間研修という名の医師不足解消にやってきた医師だった。

都心の大学病院の研修医を済ませ、
まあ優秀な成績で大学を卒業し、
研修医としてはなかなか器用で優秀だったらしいが、
ここは、地方都市の地域のための病院だ、。

救急外来には、子供から、妊婦さん、お年寄りまで
突然意識がなくなった人や事故や事件などで怪我を負った人など
症状も雑多な人々がやってくる。

各科に別れていない救急外来は
多くの知識と経験がが要求される難易度のとても高い場所なのだ。

彼は知識だけではどうにもならない
自分の力不足や、経験の浅さに苦しんでいたらしい。


わたしも、1年目の新人。
21歳になったばかりで、
失敗を重ね、先輩に叱られ続ける日々だった。

呼び名の通り泣き虫だった私は
声に出して泣ける場所を院内に探し求め歩き回った。

そして、やっと5階の奥にある会議室を曲がった先に
立ち入り禁止の防火扉のあるのを見つけ、
小さなドアの鍵が奇跡的に掛かっていないのに感謝して、
その先にあるドアを開くと、

そこは鍵のかかった屋上につながる、非常階段だった。
階段を数段上がって踊り場にたどり着いた私は声をだして泣いた。
やっと泣ける場所をみつけたのだ。
< 12 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop