恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
「彼は救命医なので、出会う人達は、怪我や病気で苦しむ人が多くて、
そこで亡くなっていく人々も少なからずいます。
でも、今回は小さな生きていこうと頑張っている命に会えた。
きっと、このベビーちゃんは彼にとって、大きな光です。
大切にしたいのでしょう。
とても、失礼な事を言っていたと思いますが、
許してやってくれませんか」と、私は話す。

「…怒ってはいませんよ。
私たちも、やっと赤ん坊に会う気になった。」と返事をしてくれた。

私はホッとする。
リュウの気持ちが伝わったなと思う。
本当に、手がかかる奴だ。


西島先生がベビーと迎えの救急車に乗り込む。
子ども病院の専用の車だ。
クベースが備え付けられていて、相手側の病院のナースも乗って来ている。
莉緒ちゃんたちも、タクシーで同じ病院に入院する為、退院だ。

私達は救急外来の入り口で見送る。
やっと莉緒ちゃんの笑顔が見られた。

小松医長が
「あの家族はきっと、大丈夫だな。
…尾崎は救急外来でもあんな感じか ?
まあ、柳が居るからどうにか問題にならずに済んでいるんだろうな…」と私に聞く。

「まあ、あまり変わらないかな。
周りのフォローが欠かせないって感じですかね。」と返事をする。

「今回は良い方向に向かったから、大目に見てやるかな。
まあ、憎めないヤツだ。
ナナコ、あいつの嫁になるのか?
明らかに、養子を取ることについて、聞かれていたと思うけど」と聞かれる。

「い、いいえ。そんなことにはなっていませんが…」慌てて首を横に振る。

「ふーん、ま、決まったら、仲人は俺がやるって、言っとけ、
柳には譲らん。」と笑って歩き去る。

私はあっけにとられて返事ができない。
なんで、付き合ってもいないのに、結婚する話になっているんだろう。

やれやれ。

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