恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
病院の裏庭に逃げ込んでトボトボ歩く。

病院の裏庭は美しく季節の花や、
樹々の緑が配され幾つかベンチも置かれている。

ここは長い間闘病していて、
もう亡くなって10年前以上経つ、院長の妻のために
自宅の庭、そのままに作られているものだ。

私は今にも咲き出しそうな小手毬のしたのベンチに座り込む。


元気そうだったな《ピヨりゅう 》
なんだかすごくたくましくなって…

すごくいい男の部類にはいっちゃったし、
10年前とは大違いだよ。


リュウにハグされた時、懐かしい匂いに包まれた。
あれは、きっと、リュウの匂い。
10年前から変わっていないけど、
中身ははどうだろう?

それに、右手の薬指には銀色の指輪がはまってた。

多分あれはエンゲージリング。
きっと、約束している婚約者がいるんだろう。

それに引き換え私は、
…2年前死んでしまった恋人のこと忘れられず、
やり甲斐に思っていた仕事も無くしてしまったままだ。

なんだか、取り残された気分だよ。



今日はいろんなことがあってすごく疲れた…



バイトに行く前に大きな溜息をついた。
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