恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
花火大会当日。

「飲み物ととレジャーシートにお弁当におやつと、あと、何が必要?」
と、リュウは遠足の時の子どものようだ。

荷物を持って午前中から一緒に部屋を出る。
リュウはすこぶる機嫌が良い。

川岸に着くともう、ずいぶんとレジャーシートが敷いてある。
なんとか、木の影になるレジャーシートを敷くところを見つけ、日陰に入る。
やっとホッとした。

「楽しいね。ナナコ。場所取りなんて、新人の時の花見以来だ。」とリュウが寝そべって言う。
「そう?退屈じゃないの?」
「俺は、この病院に来てから、いつも楽しいよ。
気の合う友達も出来たし、
上司も、同僚も患者さんのためにキチンと努力する。
それにここにはナナコもいるしね。」と笑う。

そして、会わなかった10年間について、どんな事があったかゆっくり話し合った。
私は今とあまり変わらない生活をしていたが、
リュウは、勤め先の教授と喧嘩したり、
留学したり、
海外ボランティアに行ったりとバラエティーに富んだ日々を送ってきていて、楽しい話が聞けた。

なにせ、日が暮れるまで時間があるのだ。

次第に勤務がない人達も差し入れを持ってやって来て、
ガヤガヤと飲み会の様子になっていく。

夕方、桜子先生が、やって来た時、

すでにお酒の入った柳先生と、リュウが、
テレビ番組のドラマについて、熱く語り合っているところだった。


「リュウ、ナナコちゃんを借りまーす。」と、私の手を取って、歩きだす。

「早く帰ってきてね」とリュウに送られるけど

…桜子先生、どうしたのかな。
私になにか用事かなと思いながら一緒にシートを離れた。
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