恋人未満のルームメイト（大きな河の流れるまちで。リメイク版）

桜子先生はどんどん歩いて、私の家の前までもどってしまった。

「荷物取ってくるから、先に戻ってて」
というので、部屋で待つと、すぐにやって来て、

「ナナコちゃん、一緒に浴衣に着替えよう」と浴衣を用意してくれていたのだった。

桜子先生は、私に浴衣を着せながら話し出す。

「ナナコちゃんに相談したい事があるの。
…わたしね。何年も前から好きな人がいたの。
その人は他の街から来た人で、
東野の家の事は知らないみたいだった。
だからね、私を我儘な普通の女としていつも接してくれたの。
私はその人の事がどんどん好きになった。
でも、私と結婚するとなると、
病院経営に携わる事になって、
その人の一生を自分に縛り付けてしまいそうで、
なかなか言い出せなかった。私は、彼を失いたくなかったの…
そして、どんどん時間だけが過ぎて、私は37歳になってしまった。
私はいつかは結婚して子供が欲しい。って
私の母にような母親になるのがの夢だったんだよね。
でも、子どもを産む年齢を考えたら、
のんびりしていられないって、気づいて…
先に身体の関係を持ったの。
すごいでしょ。
初めて抱かれた時、彼の子どもだけは手に入れようって誓ったわ。
彼とは別れる事になってもね。」と笑って溜息をつき、

「それで、…一昨日妊娠している事が分かったの。
とても嬉しいけど、
…彼に話した方がいいかなぁ？」
と、私に聞いてくる。

なんて、ヘビーな相談だろう。でも。

「それが、山岸さんとの事だったら、一刻も早く話した方がいいですよ」
「そう？」
「山岸さんは自分が遊びの相手かもしれないっていってたから」と言うと、

「壮一郎は馬鹿ね。
私は遊び相手と何度も寝たりしないのに」と桜子さんは呟くようにいった。