恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
4階小児病棟。

私が2年前まで働いていた場所だ。

「ぴよりゅう、帰って来たね 。」と吉岡美波(よしおか みなみ)

この病棟に唯一残った私の同期だ。
ショートカットで小柄であどけない顔立ちは何時までも25歳位に見えるけれど、
実は立派な主婦で子供も2人いて
理解のある公務員の旦那サマのおかげで
仕事と、仕事後の飲み会には、積極的に参加できる。

「…そうだね 」と気のない返事をすると、

「2人はラブラブだって、すんごい噂になってるのに〜!」とゲラゲラわらった。

「ラブラブって言葉はもお、死語だと思うけども」と私がへそを曲げると、

「しゅうちゃんが2人は抱き合ってたって力説してたよねえ」
と、ナースステイションの中で電子カルテを見ていた、小児科医の西島に同意を求めた。

「俺の方がきっとイイ男なのに、何でウワサにならないんだろうな」と笑う。

「妻子持ちの下らない冗談にはちっとも笑えません」と冷たく返す。

優しい笑顔で、お母さんたちに絶大な人気を誇っているこの医師は、
リュウのひとつ先輩だったはず。

「一昨日ナナコが帰ったあと、
ここにリュウの奴が押しかけてきて、大変だったぞ」とニヤニヤしている。

私がグッと詰まって黙ると、
「まあ、ウワサ通りにリュウで手を打っておけば?」と真面目な顔をしている。

どおしてそんな話になっているんだろう

「なんで?!」と呆れると

「ナナコ、逃げ足遅そうだから、
…たぶん…きっと捕まると思うよ。」と西島先生はクスリと笑った。

「昔と違って、ぴよ、って訳じゃなさそうだし、
リュウ先生のお手並み拝見ってところかな…」と美波まで何をいっているのやら…
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