恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
「だって、指輪、右手の薬指に指輪してたし、
その指輪、いつも、ネックレスにして大切にずっと付けてるでしょ。
リュウには、…こ、恋人がいるって…大切な人がいるんだって思って…
…あんまり仲良くしすぎちゃいけないって」

リュウは大きな溜息をつく。


「嘘だろ。
俺には恋人なんていないって。
あのさあ、
大切な指輪だからな。失くさないないように、首につけてた。
たまに右手の薬指に付けてたのはオンナ除けだから。
あそこに指輪しておくとよっぽどの覚悟を決めたオンナじゃなければ言いよってこないし、
面倒が避けられる。
俺ってモテるし…
ナナコと一緒の時手に付けてないと思うけどね」


「付けてた、最初に会った時に付けてたよ。
大切な人がいるんだって思ってたし…」


「そうだったかな、
…でも、ナナコだって修一にもらったネックレス外さなかっただろ。」
リュウの声が小さくなる。

そして、私の方に向き直り、
「好きだよ、ナナコ。
ナナコが修一の事忘れられなくても、俺は構わないんだ。
…いや、違うかな。
きっと、俺は、修一に勝ちたい。
ナナコの1番好きなオトコになりたい」と決心しているように言い切った。

そして首からネックレスを外し、私に渡し、
「指輪の内側見て。」 と言った。

内側には文字が日本語で書いてある。……ショシンワスレルベカラズ…⁈

「《初心忘れるべからず》。俺を救命医として最初に誘ってくれた恩師の指輪。
…亡くなったとき、恩師の奥さんに渡されたんだ。
俺に渡すように言われてたからって。
だから、大切な指輪。」とリュウは笑った。

私は言葉を失う。
そうか…そうだったんだ。

ずっと大切そうに身につけてた理由がやっと分かった。
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