恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
賑やかな商店街にをゆっくり歩き、八百屋の前に立つと、

「あら、奈々ちゃん、久しぶり。入って、入って、」と修一のお母さんが笑う。
お父さんも
「奈々ちゃん、梨食べるか」と声をかけてくれる。私は笑って、

「麦茶、いただいていいですか?」と上がらせてもらう事にする。

何度かお邪魔した店の奥にある家は1階の和室にお仏壇がある。

仏壇の前で手を合わせていると、修一のお母さんが部屋に入ってきた。

麦茶のコップを持っている。

「今日も暑いね。奈々ちゃん、元気だった?
修一の所に行ってくれたの?」と笑ってくれる。

毎年の行事みたいになっているからだ。
私は頷きながら、麦茶を受け取って飲み、
また、看護師の仕事を始められた事を報告する。

お母さんは喜んでくれる。

「今日子から、聞いていたけど、健康そうでよかった。」と笑って、

「そうそう、6月のはじめあたりに、尾崎さんって、人が挨拶にきたよ。」と続けた。

ハイ?!なんですって?


「奈々ちゃんと一緒に住む事になったって、
周りの人から、耳に入るより、キチンと説明したいって言って。
あたし達にワザワザ言いに来なくてもいいのにねぇ。」

と梨を剥いて持って上がってきたお父さんに、同意を求める。

「奈々ちゃんが仕事に戻れるようにサポートしたいって言って、
自分には下心はあるけれども、今は仕事に戻すことだけ考えたいって言ってたわー。
面白い人ね。」

と、ケラケラ笑う。私は驚いて、返事が出来ない。
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