恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
2人で並んで歯を磨き、ベッドに横になる。
疲れていたナナコは5分も経たずに寝息を立てた。


暇になった俺は今までの事を思い返す。

今年の4月にこの病院にやってきた時は、
ナナコにもう一度会って、自分の気持ちにケリをつけたいと思っていた。

ナナコは10年前も可愛らしい、真面目な女の子だったので、
きっと、誰かと幸せに暮らしている可能性が高いと思ったからだ。

救急外来で、瞳が綺麗な、好みのオンナがいると見つめたら、
ナナコだった。って、俺って、どれだけ、ナナコが好きなんだろうって、
後から呆れたくらいだ。
以前よりちょっと、痩せすぎた感じだが、
オトナの表情を浮かべたナナコをハグしたら、
柔らかくて、変わらない匂いで、
苦しいくらい惹かれる自分を自覚した。

両手を握って確認したら、まだ、1人みたいで、
必ず、手に入れようとそこで誓った。

ナナコに恋人がいないとは思っていなかったけど、
まさか、亡くなっているとは思わなかった。
でも、きっと、ナナコの心は、その恋人と一緒にいるって事は容易に想像出来た。
これは、俺の心を全部傾けても、ナナコの全部が手に入らないかもしれないって、
自問自答したけど、
自分はナナコを求めているってことが分かっていたので、
全部が手に入らなくても、
全力で、でもナナコを傷つけないように
1番近くに居たいと思った。
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