恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
1時間ほど経った頃、
「やっぱり、まだいたな。」リュウが病棟に戻って来た。

私と、佳乃子ちゃんはやっと全員分のメダルを作り終え、
子供達と遊び終えたところだった。

「ナナコ、この後夕飯食べない?話もあるし」とニッコリ私を誘う。
「いいけど…」

今日の予定は夜中からバイトがあるだけだ。
病院の裏庭でリュウと待ち合わせる事にする。

佳乃子ちゃんと別れ、ひとりで裏庭のベンチに座り、今日あった事を考える。

目まぐるしい1日だった。
リュウに振り回されたと、思う。
でも、嫌な気分にはならなかったなとも思う。


「ナナコ!」
と走ってきた様子のリュウは少し息が乱れている。

「そんなに走らなくてもいいのに」と笑うと、

「そんなところにひとりで置いといて、ナンパされてても困るから…」

「昔と違って、もう、若くないから、ナンパなんかされないって」

「知らないオトコについて行ったら駄目だからな、
いや、知ってるオトコにもついて行くなよ」

って言うのは、なんだろう?結構、勝手な発言ですけど?

「リュウ先生はにはついて行ってもいいのかなあ?」と顔をしかめて聞くと、
「俺はナナコの事、ちゃんと考えてるからいいんだよ。」と、私の手を掴んで歩き出す。

昔は手なんか掴まなかったのに、
随分強引なオトコになったもんだと思う。

「手、離してください。
誰に見られるかわかりませんから」とリュウを上目遣いに見上げると、
リュウは笑って、手を掴んだままブンブンと振って、

「みなさんに見てもらいたいなぁ、
ナナコが仕事始めた途端、オトコが寄ってきても困る。
ちゃんと仕事に戻れるように考えてるんだからさ」とどんどん歩く。

背が高く、がっしりしているリュウは遠くからでもよく目立つ。
病院の敷地を出るまでに、知った顔と何人かすれ違う。

私は、引っ張られて歩きながら、
夕飯の約束なんかするんじゃなかったと少し後悔する。

きっと、また、美波が噂になっていると教えてくれるだろう。
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