恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
「もちろん、俺もナナコも昔一緒にいた時のままじゃないのはわかってる、
でも、救急外来で、キチンと仕事が出来たのや、
子供達と一緒にいるのを見ると、
きっと、今までずっと努力してきたんだろうなって感じる。
急に大切な人を失って、今までみたいに仕事が出来なくなってしまっていたのは、
心を休ませるために必要な事だったって思う。
今日、子供達に笑顔で接することが出来たのは、
また、看護師の仕事が出来るって、
ナナコの心の合図だって思えないかな?」リュウは熱心に私に話す。

「…そうかな」と私はまだ、自分に自身が持てない。

「きっと、そうだよ。一緒に頑張ろう。
もし、上手く仕事に戻れなかったら、…また、一緒に考えればいいよ。
…そっか、俺、独身だし、
俺と結婚して、専業主婦になる?」

ば、馬鹿なの?


「思いつきで、そいう事は言わないでください!」顔が赤くなる。

いつからこのオトコはこんな風に女心をもてあそぶようになったんだ?!


「いい思いつきだと思ったんだけどなぁ。
先のことを心配しないで、思い切り仕事が出来る。」

「先のことが解っていたら、楽しくないでしょう。
頑張らなくてもいいって、逃げたくないし…」と、私が言うとリュウは笑って、


「真面目で、不器用なナナコ。
昔とあんまり変わってないんだな。
大人になったんだから、少しはズルくなって、
周りに頼ってもいいと思うよ。
とりあえず、栄養面は俺に頼ってください。
…おー、すき焼き屋あったじゃん。」と駅ビルの看板を見て言った。

高級なすき焼きやで和服姿の店員さんに迎えられる。
席に着くとリュウは
「オネーサン、この人に上等な肉嫌っていうほど食べさせてあげて。」
と注文したのだった。

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