恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
半年で15キロ減ってポヨポヨの二の腕が、懐かしく思えるほどだ。

こんな小さな町では、事故で恋人が死んでしまったことは隠しようもない。

休職を命じられて、用意していた退職願いをだしたら、
『他の病院で働いて倒れられてもね』
と、優しい看護部長に諭された。


3ヶ月後にもう一度出した退職願いは
看護部長の手許あずかりになっている。

いつでも戻ってきていいと、個人経営の病院は融通がききすぎる。

ただ、当然収入はなくなったので、アルバイトを探した。

今は駅前の24時間営業のチェーンレストランとコンビニのバイトを組み合わせて暮らしている。
看護師をしていた7年間の貯蓄もあるし、
とりあえず大丈夫。


ベンチに座って、キラキラした水面を睨むように眺めていたら、
やっと涙がとまってきた。

視線を移して野球のグラウンドをそっと見る。
誰もいないグラウンドはポッカリ穴の空いた私の心のようだ。

少年野球のコーチで、よく川沿いをジョギングしていた彼と
川の眺めが好きだった私が
川岸を散歩したり、ベンチに泣きに行ったりしていて、出逢ったのはこの辺りだ。


付き合うようになって、彼のチームを応援したり、
天気の良い日にクローバーの上にシートを広げてお弁当を食べたり、
川沿いを一緒に散歩したり、
思い出がいっぱいでここに来ると時々苦しくなる。


彼は夢の中で笑顔だった、
でも声は聞こえない、
なんて言ってるの?


目の前から急にいなくなるなんてずるいよ、

いつまでも好きなままだよ。

修一

もう一度会いたいよ。
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