恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
「ナナコ、お腹すいてきた。早く行こう」と、手を引かれながら歩く。

きっと、リュウはわかっている。
私が、リュウの嬉しそうな笑顔を拒みきれないってことを…


スーパーではあれこれ買いたがるリュウを止めながら、献立を考える。

2年間、時給の安いバイトをしていたから、
自炊するのが習慣になっていた。

今日は作り置きのきんぴらごぼうや、炒り豆腐が残っているから、

「今日は豚肉のしゃぶしゃぶ風の鍋にしようかな、」
といってみると、嬉しそうに頷いた。

コドモみたいだよ、リュウ、
そんな君はキライじゃないけどさ…


食材を買い終えると、
「チョット待って」とリュウが冷凍庫にに戻っていく。
「まだ、コイツが好き?」と2個アイスのカップを手にしている。

高級アイスクリームメーカーのチョコチップ。

よく非常階段で風に吹かれながらたべていた。
覚えていたんだ。なんだか、照れ臭い。

私は頷きながら考える。

リュウはアイスは食べなかったはず。

「リュウも食べるの?」と聞くと、

「だって、ナナコが美味そうに食ってたから、
東京に越してから、つい、買っっちゃうんだよな、これが」と照れ臭そうに笑ったのだった。

そんな顔をして笑いかけないでほしい、

リュウの瞳から目が離せなくなってしまう。


ドキドキと音を立てる心臓を自覚しながら私は買い物カゴに目を移し、
レジに向かって歩き出した。
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