恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
「本当に、襲いかからない?」

と私の住むマンションの扉の前で、もう一度リュウに確認する。

「誓う。今日は襲わない。」と、右手を上げて笑う。真面目な顔をして
「ナナコが嫌がることはしないよ。」と続ける。

イヤガラナケレバドウスルノ?

と思った私は自分に驚く。

さっきもリュウの首にかかった指輪が気になった。
今日の私はどうかしている。

黙り込む私に
「ここにずーっと立ってると、目立たないかなぁ?誰か来そうだな〜」と、私の顔を覗き込む。

だから、顔が近いって!
私は顔を背け、思い切って、鍵を開けた。


このマンションは東野家の持ち物だ。
イーストメゾン(east maison)の2号館、
築20年の賃貸マンションだ。

何号館まであるのか知らないが、結構沢山ある。
病院の職員は最初の諸費用の免除と、家賃の割引があるので利用している職員も多い。

私は社会人3年目で看護師寮を出て、このマンションに移った。
1LDK3階の角部屋だ。
10万円の家賃は補助が出れば8万円だ。
地方都市でこの金額は高いとおもったが、
日当たりの良い10畳のリビングや、6畳の寝室、
広めのキッチンは、IHのコンロが2口あってキチンと料理ができるし、
バス、トイレは勿論別々で、
ベランダに洗濯物も干せる。
病院にも歩いて15分だ。

まあ、新婚さん向けというやつかもしれない。
看護師は普通のOLさんより結構お給料が良い。
ブランド物の服やバッグなどにハマらなければ、困らないはずだった。

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