恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
「やっぱり、マンションいいな。」と、リュウが呟いたので、
どうしたのかと、顔を覗くと、

「俺が今借りている、研修医用の部屋、壁が薄くて、
トイレの水の音とかシャワーの音とか、足音とか、
寝てると気になってさ、
みんな不規則な生活してるから、結構気を使う」と話す。


私達は、深夜に帰宅したり、日中眠ったりと、
サラリーマンの人達とは、生活が違うので、
自分の生活音が気になるから…
それも、部屋を選ぶときのチェックポイントだよね。

私が角部屋を選んでいるのには、それもあった。

リュウも周囲に気を使う、繊細な神経を持っていたはずだ。(昔は)


「ここって、マンションだし、周りの音とか大丈夫そうじゃん」と笑う。

そうね。と頷きながら、

私は急に思い出し、
「でもね、夜、外の廊下を歩いてたら、歌が聞こえてきて、
お風呂場の換気口が、玄関の脇にあって、そこから、声が聞こえてた。
私は、気をつけようって、
引っ越したばかりの時、すごく思ったわ。」と笑うと、

リュウも笑いながら、
「さすがに、部屋を探すとき、風呂までは入ってから決めるってわけにはいかないなー、
俺もここでは、風呂に入る時、歌わないように気をつける。」とニッコリする。

いや、そんな注意をしたのではないでしょう、

「お風呂は貸さないから」と睨んでおく。
「はーい、分かってますよー。
俺、昔から商店街にある銭湯好きだもん。
ゆっくり足を伸ばして入りたい時は銭湯だよな。
じーさん達と話すの楽しいし」と言った。

私は、銭湯で、背が高く、ガタイのいいリュウが、
珍しさで声をかけられる姿を容易に想像し、思わず吹き出した、


「リュウ、結構、この町に馴染んで来ちゃってるの?」と聞くと、

「俺、この町に住みつくつもりなんだよね。
仕事はやり甲斐あるし、…ナナコもいるし」とアッサリ言った。
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