恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
リュウは急に話さなくなった私に、不思議な顔をしている。

私は、意識して、できるだけ、優しい声を出す
「この町に来ることに反対しているひとはいないの?」と聞く。

リュウは困った顔をして、
「そう!そうなんだよ、ナナコ。
こんな田舎に住むのは反対だって言われてる。
困ってるんだな、これが…
ナナコも一緒に説得してくれる?」とリュウは無邪気に笑う。

…恋人がここに住むことを反対してるのかな…
リュウの望みを叶えるために私も出来ることをしたいけど…


「いいよ。そうだねーこの町にその人を連れて来れたらね。」と私も笑ってみせる。

「えー、それまで、俺ひとりぃ?」
「当然です。」

リュウは不服そうだ。

大丈夫だよリュウ。
2年間仕事に戻る勇気がなかった私を、
自信をなくして仕事を諦めようとしていた私を、
あなたは引っ張って、
連れ出してくれた。

きっと、東京にいるそのひとも、連れ出して説得出来るよ。

…きっと。

私は見えないリュウの首にかかったリングを思いながら、
お腹が空いたと話をきりあげ、キッチンに立った。
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