恋人未満のルームメイト（大きな河の流れるまちで。リメイク版）

「あ、慰める必要はないよ。
…ただ、ぼくの中には前の奥さんの形をした穴が空いてるってだけ、
きっと、…君の中にも昔の恋人の形をした穴が空いているのかなって、
そう思ったんだよ。
そして、尾崎先生はその穴を強引に埋めようとしているんじゃないっかって…、
でも…
きっと、その穴は自分で埋めないとダメなんだけどね。」
と一息に言った。

「料理が冷めるね。食べようか」と笑って食事を一緒に食べる。

イタリア風の料理は多分、美味しいはず。
私にはどの料理も味がしない。
食べ終わって、皿がかたずけられ、
新しく作られたウィスキーと、色のついたカクテルが運ばれてくる。

菅原先生は、もう、5杯めになるのにちっとも酔って見えない。
そういうと、まだ、話の途中でだからと笑う。
そして、
「上川さん、ぼくならそんな事はしない。
昔の恋人の事は、そのままでいいんだ。
お互いに自分で少しずつ、穴を埋めればいい。
僕は尾崎先生みたいに君の心にズカズカ入ったりしないよ。
きっと、僕たちは、上手くやっていける。
お互い踏み込み過ぎて、傷付け合ったりしないでね。
ぼくは君の笑顔が好きだよ」

といって、私の頬にそっと触れた。