恋人未満のルームメイト（大きな河の流れるまちで。リメイク版）

桜子先生が化粧室に立って、山岸さんが大きくため息をつく。

私が山岸さんの顔を覗くと
「ねえ、ナナコちゃん、
桜子さんがさっき菅原先生が好きじゃない女の子と付き合ってる事、
非難してたの覚えてる？」と聞く。

私は頷く。

「でもねえ、桜子さんも同じような事をしてる。」
と口の端をあげて更に言う
「付き合っていないオトコと身体だけの関係を持ってる」

私は、目が丸くなる。

山岸さんは
「桜子さんに初めて抱いて欲しいって言われた時、
好きじゃなくていいからって言われた。
だから、僕たちは、それからずっと身体だけの関係。」と笑う。

私は、『えー！？』と声が出そうになるのをなんとか我慢する

「桜子さんは、他に付き合っているオトコがいるようには思えないんだけど、
僕には決して好きだとは言わないんだよね。
僕は彼女を抱くずーっと前から彼女の事が好きなんだけど。…」

そして、
「内緒にしてね。ナナコちゃん。」と言って、また、大きなため息をついた。

オトナの関係は複雑だ。

私には、山岸さんにかける言葉を持っていない。