あの日失った想い
私は無我夢中に走っていた。
ガラスの破片でも踏んだのか、足から血が出ている。




「もぉ、何よっ!」





イライラして、そこにある物にまで当たってしまう。




…いや、何に対してイライラしているのだろう。





人気の無い路地に入って、座った。




「…っ、」





座って落ち着こうとすると、また涙が溢れてきた。





「花恋さんには敵わないっ………」




子供が泣きじゃくるかのように泣いた。





誰も慰めてくれる人なんていやしないのに。





私はもう郁麻に関わっちゃいけない。




いや、関わりたくない。







自分自身がかわいいが故に出した結論だった。





郁麻、ごめんなさい。


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