あの日失った想い
「それに俺は、お前のことを最低だとは思わねぇ。

軽蔑なんてするわけねぇよ。

お前はいつも自分のことは後で、人のことばっかり気にかけている優しい奴だって知ってる。

だからさ、たまには怒ったっていいじゃねぇか。誰かに怒りをぶちまけるくらいさ。

怒ったり泣いたりした後は、その倍ぐらい笑えばいいんじゃね?」



私は涙が止まらなかった。とめどなく瞳から落ちてくる。


郁麻は私の知っているよりも、ずっと大人で、すごく私のことを考えてくれていた。


わたし、本当に彼に悪いことをしてしまった。



彼の洋服は、私の涙で濡れていた。

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