あの日失った想い
「私もあなたの立場ならこの話は受け入れにくいと思う。




でもね、郁麻。




大好きだったお父さんを忘れたまま生きていくなんて、そんなのダメだよ」




私は郁麻の手を握った。とても強く。



だって、彼の手が震えていたんだもの。




「今の話を信じたとしても、俺にはどうすることもできない。
何をしたらいいのか分からねぇ……」




彼が今にも消えそうな声で囁いた。



< 245 / 282 >

この作品をシェア

pagetop