あの日失った想い
「もぉ、郁麻上手すぎだよ!」



私はすでに息が上がっていた。なので、その場にぺたっと座った。




彼は文字通り余裕そうだった。




「お前も筋は悪くないんじゃねぇーの」




彼は私の目の前に手を差し出してきた。




まさかの、これは…あれだよね?





一体、誰に訊ねたのだろう。




私は鳴り止まない心臓をそのままにして、彼の手を握った。




彼は私の手を引いて、疲れ切った私を立たせてくれた。




郁麻の手は男の子の力強い、大きな手だった。





胸の奥が熱くなる。本当に何これ?



「ありがとう。それじゃあ、遅くなったし付き合ってくれて嬉しかった。また、学校でね」




私は笑顔でお礼を言うと、公園の出口に足を進めた。

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