あの日失った想い
ブーブーブー…

枕元でスマホが暴れる。うるせぇな。

電話の相手は予想通り、ハルだった。


「何?」


『何じゃねぇだろ!大丈夫か?』

心配してくれるのはありがたいが、ハルのでかい声が今は少し不愉快だ。

「あぁ」

『郁麻!?元気してる?』

これもでかい女の声。仁美か。

「あぁ」



何か、不毛な会話だな。



『由佳里も話しなよ!』



『え?大丈夫よ。郁麻も迷惑でしょ?』


受話器の向こうで由佳里と仁美の会話が訊こえた。

由佳里はあいかわらず遠慮がちだな。



…ハルと仁美はそっくりだけどな。

< 66 / 282 >

この作品をシェア

pagetop