あの日失った想い
「大丈夫だよ、仁美なら!




だって仁美、楽器吹いてるときね




郁麻にもハルにも負けてないぐらいキラキラしてるもん!



それに、すごくかっこいいじゃない!」




何の根拠もない私の言葉。




でも、どうやら仁美の心には届いたらしい。





彼女の目の色が変わった。彼女が纏う雰囲気が変わった。





そして彼女は、小さく微笑んで「ありがとう」と言った。





この日の放課後、仁美が部活に行ったため私は一人で帰った。




仁美、ちゃんと届くよ。がんばって。










その日の校舎には





仁美の思いを乗せて、少し低音のサックスの音が鳴り響いていた。

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