てるてる坊主にコロサレタ
「裏の方だっ、行こうっ」


ソファから飛び出した奈穂実は、わたしの手を握るとロビーを走りだした。

さすがに今の悲鳴には誰もが気がついたみたいで、何人かがわたしたちの後に続いてくる。


「奈穂実、どこ行くのっ? 私、お焼香してくるけど、」


正面玄関を出ると、喪服姿の一人の女性が声をかけてきた。
紹介されなくても奈穂実にそっくりの顔をしているから誰だか分かる。


「母さん、ちょっと待ってて」


一瞬だけ立ち止まった奈穂実はそう言い投げると、わたしの手を握ったまま、また走りはじめた。
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