てるてる坊主にコロサレタ
「誰か落ちてるぞっ! 」
「早く救急車を呼んでっ! 」
「うわぁぁあ! 首が、首がないっ」


集まってきた人達を掻き分けるように、双子の母親の多華江がやって来た。


「どいてっ、道をあけてっ! どきなさいよっ! 」


多華江は山崎先生の体を全く気にもとめずに素通りした。
そして握りしめていた何かを離して草履を脱ぎ捨てると、着物のままフェンスを乗り越え、降りた、というよりは豪快に転がり落ちていった。


濡れた喪服は、襦袢と足袋が赤く染まっていく。


そこは水溜まりではなくて、山崎先生から流れ出た血溜まりだった。

けれど、多華江は気にもしていない。
落ちた痛みすら感じていないようで。
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