てるてる坊主にコロサレタ
何度も『やめてっ』って叫んだのに、この声はお父さんには届かなかった。


『……美晴』


お父さんは“遠くにいる”と思っているわたしの名前を優しく呼んでくれた。
“もうすぐ会える”と信じて幸せそうに微笑んで……。

そしてダラリと垂れ下がったお父さんの姿は、……てるてる坊主みたいだった。


もしも“あの世”というものがあるのなら、お父さんと一緒に逝こうって思ったけれど、わたしは悔しさが足枷になって、ここから動けなくて。


「お父さんまで殺したあんた達をわたしは絶対に許さない」


奈穂実は言葉を失ったまま、けれども無意識に母親を守ろうとしているのか、

「ごめんなさい、ごめんなさい」

と泣きはじめた実宇子の肩を抱き寄せた。
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