三月の雪は、きみの嘘
私たちの間に流れた別々の時間は、もう友達には戻してくれないのかな……。

教壇では、担任の山田先生が大きな体を揺らしながらチョークで黒板に音を立てている。
丸々としたフォルムに、女性とは思えないほど豪快な笑い方をする印象。

「それじゃあ、午前の授業はここまで。お腹すいちゃったから、チャイムが鳴る前だけど終わっちゃうわね」

山田先生の言葉に、教室中が大きな笑いに包まれる。

彼女はそうやってすぐにご飯ネタをからめてくる、おもしろい先生だ。

その一方で、おっちょこちょいなのは、初日で実感している。

昔この町に住んでいたことを伝えたはずなのに、すっかり忘れたらしく『東京出身の転校生』だと、みんなに紹介されてしまったのだ。

ほどなくしてチャイムも鳴り、あっという間にざわめきに包まれていく教室。

「ご飯ご飯〜」と楽しそうな声を上げながら、みんな定位置へ移動しお弁当を食べ始める。

私もカバンからスーパーの袋を取り出し、昨日の帰りに買っておいたパンとお茶を机の上に並べた。

パンの包みを破る音がガサガサと大きく感じ、周囲から自分の存在を隠すように体を丸めた。


そのとき……。
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