三月の雪は、きみの嘘
言った途端、いつものようにキュッと胸が締めつけられる感覚がした。

それはきっと、罪悪感という名の後悔だ。

「同じだね。私もお昼はパン派なんだ」

彼女のうれしそうな顔を見て、さらに胸が痛んだ。

『お母さんの仕事が朝早いから、パンを買って食べるしかない』って、どうして正直に言えないんだろう。


そんな自分が本当にイヤになる。


微笑んでいる彼女の向こう側で、またあの男子生徒からの視線を感じた。

“なにげなく”のレベルではなく、じっと見つめられている気がする。


やっぱり見透かされてる!?

そう思ってしまうのは、私の勘繰りすぎだろうか。

しかし、やがて顔をそむけた彼は大あくびをした。

深読みしすぎているだけみたいでホッとした。

それにしても、なんで私はこんなに彼のことを気にしちゃってるんだろう……。


「東京人だし、おしゃれなんじゃね」


遠くから届いた声に、思考が中断された。

見ると、壁によりかかって座っている茶髪の男子がニヤニヤ笑っていた。


だから東京人じゃないってば。
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