三月の雪は、きみの嘘
山田先生が勘違いしたせいで、すっかり都会の人扱いになってるけど。

言い返そうと立ち上がりかけた私の腕を、学級委員がつかんだ。

「あんな男子の言うことなんて気にしちゃダメだよ」

そう言う彼女は、私をかばってくれようとしているみたいだった。

だよね、転校早々に地の自分を出すのはやめとくべきだろう。


それに、またウソをついてしまうかもしれないし……。


だけど、ニヤニヤ男子は反応がないのが不満らしく、「こんな田舎に来ちゃってかわいそうだよなぁ」と大きな声で言ってくるから、思わずにらんでしまった。


……なによ。


唇をかんで言葉の流出を抑えるけれど、せめて東京出身じゃないことだけでも言いたい。

今にも口を開こうとしたそのとき……。


「おい、うるせーよ」


静かだけれどよく通る低音が届き、思わず体がビクッと跳ねた。

「んだよ拓海」

「声がでかい。選挙演説かよ」

その瞬間、教室内に笑いが起きた。


さらに周りの女子たちが、「そうだよ。性格悪すぎ」などとはやし立て始めると、ニヤニヤ男子は静かになった。
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