三月の雪は、きみの嘘
きちんと結んだ三つ編みと、小柄な体に似合わない大きな目が、不安そうに左右に揺れている。

やばい、無視しているみたいな状況を作ってしまってた。


「はっ、はい」


せっかく話しかけてくれたのに出遅れた、という焦りで声が上ずってしまう。

たしか、学級委員だったっけ。

名前はまだ知らない。


「あの……。担任の山田先生が、これを渡すようにって」


そう言って、彼女は一枚のプリントを差し出した。

見れば、住所や通学路を書く用紙のようだ。

転校するたびに渡される恒例の紙は、書式は違えど見覚えがあった。

「ありがとう」

私の声に、その子はあからさまにホッとした顔をした。

「すぐに書いちゃうね」

笑顔を浮かべた私に、彼女は「えっ?」と驚いた顔をした。

「ご両親に書いてもらうやつだから、熊切さんが書かなくてもいいんだよ」

「あ……そう、なんだ」


うなずきながらも不自然に顔がこわばっているのを感じる。
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