三月の雪は、きみの嘘
両親……つまり、お父さんとお母さん。

その言葉が、ずしんと胸にのしかかった。

急に黙った私に、不思議そうな顔をしている学級委員が視界の端に映っている。


なにか話さなくちゃ……。


そう思えば思うほど、考えがまとまらない。

明らかに不自然に、無言の時間が流れている。


「どうかしたの?」


彼女の心配そうな声が耳に届いた。

なんでもないことを伝えないと……。

「あ、ごめん」

私はゆっくり彼女を見た。

「ちょっと寝不足で、ぼんやりしちゃった」

ついウソをついてしまった。

『しまった』と思ってももう遅い。

「眠れなかったの?」

眉をひそめる学級委員に、自分をコントロールできないまま大きくうなずいていた。

「引っ越しパーティーをしたの。前の学校の友達が遊びに来てくれて」


あふれる言葉は、すべてありもしなかった昨日の出来事。


「そうなんだ」

にっこり笑った学級委員は、軽く会釈をすると席に戻ってゆく。
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