三月の雪は、きみの嘘
それを見送りながら、胸にチクリと痛みが走った。

脳裏に浮かんでいた空想の引っ越しパーティーもシャットダウンした。


またウソをついちゃった……。


いつからだろう、ウソをつくようになったのは。

望んでいるわけでもないのに、別の生き物みたいに笑顔でウソの言葉を重ねてしまうのだ。

胸に片手を当てれば、後悔が満ちていくように苦しかった。

どうしてウソをついてしまうのかはわからない。

だけど、なにかの拍子に口からこぼれるウソを、私は止めることもできずに放ってしまう。

そう、自分から友達を作れなくなった理由は、私がウソつきだから。

そんな自分がイヤで、口を開くのが怖くなって、自ら話しかけることが難しくなっていた。

ふと右斜め前から視線を感じて顔を上げると、イスに座ったまま顔だけをこちらに向けている男子生徒と目が合った。

じっと私を見つめている。


……こんな男子生徒、クラスにいたっけ?


大きな体で窮屈そうに座っている彼の目は鋭く、まるでウソをついた自分を責められているような気分になる。

だけど、それは気のせいだとわかっている。


なぜなら、これまでもウソを見破られたことはないから。
< 7 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop