マドンナは社長秘書室勤務
「彼女は渡しません」
ハッキリとした声でそう言うと溜め息があちらこちらから聞こえ始めた。
「榛原、行こう」
私はパートナーの勤めとして田神社長の腕に手を回す。
もう娘さんは諦めたのか引き止めようとはしてこない。
今から挨拶に行くのはこのパーティーの主催者。
あの場所にいる。
広いパーティー会場にも関わらずあの場所に大勢の人々が固まっているのだから。
一歩一歩前に進む毎に視線を浴びる。
そしてレッドカーペットの上にいるかのように目の前にいた大勢の人々が道を作るのだ。
主催者の元に田神社長を、と。
しかしながらそんなルールがあるはずもない。
けれども。
「少しお時間を」
こんな風に田神社長や私に話をしようと半ば無理矢理前飛び出してきても周りの人達が必然と止めに入るのだ。
万が一田神社長の逆鱗に触れたら会社がどうなってもしらないぞ、と。