マドンナは社長秘書室勤務
「送ってやってもいい」
「はい?」
「タクシーが嫌なら送ってやってもいい」
「田神社長?」
田神社長が見上げる私に視線を向けた。
「……タクシーが嫌なら」
「三度言わせてしまってすみません」
常に多忙をきわめる田神社長。
そんな時間に追れてる人に三度も同じ言葉を繰り返しをさせるわけにもいかない。
きっと私の反応が悪かったのだろう。
「ご心配ありがとうございます。タクシーが嫌ではなく、今朝は何となく歩けると思ったので。途中でそんな選択をした事に後悔してしまいましたけど」
「そうか」
「はい。でもそのせいで朝から田神社長や田神室長に迷惑をかけてしまって…」
「迷惑だと思ってない」
ありがとうございますを込めて頭を下げた。
そして顔を上げてからもう一度ありがとうございますを言おうと心に決めた私は、
「……きゃっ」