マドンナは社長秘書室勤務


「ありがとうございます」

「そんなっ、顔を上げてください」


深々と頭を下げる田神室長を止める為に私は立ち上がる。

田神室長は私が訴えないと言った本当の理由を気付いていないだろう。

ううん、田神室長の事だから気付いていても気付いていないフリをしているのかもしれない。

それなら良い。


「頭をあげてください」


なんとか田神室長に顔を上げてもらえた私は、ふと壁にかかったモダンな時計に目を向けた。

10時35分。

サーッと汗が引く。


「すぐに仕事に取り掛かります!田神室長は大丈夫ですか?」

「榛原さんは別室で私と仕事をしていると伝えてありますのでそう焦らず。私に関しても今日は決算の日ですから社長は出る予定はありませんので大丈夫です。私の分も少し社長に押し付けましたが自業自得でしょう。きっと捗っていないでしょうが」

「田神室長が居ないからですか?」

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