マドンナは社長秘書室勤務

「多分という所は榛原らしいな」

「そうですか？」

「ああ。でも良かった。嫌と断言されなくて」


微かに微笑んだ田神社長。

何だか一週間前から私の中で抱いていた田神社長の印象が大きく変化している。


「田神社長って以外とお喋りだったんですね。てっきり無口な方だと思っていました」

「無口は嫌なんだろう？」

「え？」

「榛原がそう言っていたと聞いたが。無口は嫌だと。だから俺は…」


そんな事を私は言った覚えはない。

田神社長は一体誰から聞いたというのだろうか。


「言ってません」

「……」

「……」

「……」


顔をしかめ黙りこむ田神社長に、でもと私は付け足した。


「お喋りな田神社長は良いと思います。無理してお喋りの真似をしてるならあれですけど」

「そうか？」

「はい。でも、その…。エレベーターの時みたいに」

「努力する」