マドンナは社長秘書室勤務
自動ドアを抜けて、少し進み正面に現れたデカデカとした大きな扉をお盆をもってない方でノックする。
「はい」
「失礼します」
珈琲の値段を知ってより一滴も溢さないように慎重に扉を開こうとしたら、ノックに対しはいと返事をしてくれた田神室長が開けてくれて。
ありがとうございますと頭を下げてからデスクに座り、私が入ってきた事すら気付かない程集中している田神社長の元へ。
「田神社長」
「榛原…?なんだまだ帰ってなかったのか。外はすぐ暗くなる。早く帰った方がいい」
「先ほど珈琲をお出しするの忘れてた事に気付いて。なので」
コトンとデスクの上に珈琲を乗せた。
「まだ帰ってなかったのはこの為か?」
「はい」
「そうか…」
置いたばかりのカップに手を伸ばし、田神社長は一口。
「旨い」
「良かったです。あ、田神室長も珈琲どうぞ」