マドンナは社長秘書室勤務


急にムスッとした田神社長に間違った事を言った?と不安になる。


「アイツが言ったように榛原は動揺したのか?」

「今朝起きてビックリしました」

「それだけか?」


それだけ、ではなかった。

ビックリしてそれでいてお祝いしなければいけないのに全然そうじゃなくって。

むしろ、なんて言うべきか。

……悲しかったのだ。


「はい。それだけです」

「嘘つくな」

「嘘ではないです」


本当は嘘。

でも本音を言えるわけがない。


「榛原…、何故嘘をつく」


さっきまではあんなにムスッとしていたのに、悲しそうな表情を浮かべる田神社長。


「俺が結婚する事に榛原は反対ではないのか?」

「私には反対する資格はありません」

「反対に資格は必要か?」

「それは…。多分必要だと思います。田神社長にああだこうだ言えるような立場でもないです」


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