マドンナは社長秘書室勤務


「田神社長にも怖い事あるんですね」

「これは賭けだったからな。婚約だの結婚だの、そんなデマに榛原が少しでもと思ったんだが…」

「え…?」


田神社長の言葉が私の頭をぐるぐる駆け巡る。


「デマ、なんですか」

「そうだ。会食したのは事実だがそれ以外は事実無根だ」

「ということは田神社長はアメリカ有数のホテルチェーンのお嬢様とご婚約も結婚もしないって事ですか?」

「そうなる」


田神社長は婚約もしないし結婚もしない。

あれは事実無根。


「田神社長っ、早くそれを言ってくださいよ!」

「だから言ったろ?陥ってないと」

「分かりづらいですよ」


緊張の糸がぷつんと切れた私は身体から力を抜いた。

ああっ、もう。

今の私は安心感と怒りが混ざりあっていて。


「何故泣く?」

「感情のコントロールが出来ないからです」


それにより涙が流れる。


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