マドンナは社長秘書室勤務


絵文字も顔文字も記号もなし。

いつも決まって7時30分に送られてくるおはようだけのそのメール。

それに対して私は同じようにおはようございますと返事をするのだ。

絵文字も顔文字もないけれど、最後に”。”をつけて。


「今時の中学生もしなさそうな可愛らしいメールね。それ以外は?」

「お疲れも夕方に来ます」

「愛の言葉の一つや二つとは言わないけど何気ない会話を日和ちゃんとする勇気はないのかしら。そんなの業務挨拶と何ら変わらないじゃない。友達になろうと誘ってきた社長がそれを分かっていないだなんて」


有り得ないわ、とミニトマトに箸を差した阿室さん。

阿室さんはそう言うけれど私にはそれが丁度良いと思っていて、これが突然田神社長からしょっちゅうメールが来たらそれはそれで嫌かもしれない。


「でも近いうちにデートに誘われるかもしれないわね。社長も動きたくなるはずよ!」


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