三本串
リハビリステーションを覗くと そこに華子がいた。


額から汗を流し 必死に手摺にしがみつき 歩行連絡をしている


辺りの人も 何やら必死に訓練をしている


皆ね必死な姿に しばし見いっていた


声をかけるタイミングすら見つからない


すると華子が 邦夫に気づいた


『あ 邦夫君 どうしたの?』


華子は汗を拭い 手をふった


『ちょっと 見舞いにね 邪魔しちゃ悪いから 』


『今ちょうど休憩しようと思ってたの』


『あ そうか あっ 手を貸そう』


車椅子に座りかけた華子に 手をのばし


外のベンチまで押して行く


『華子ちゃん 頑張ってるね』


『うん 1日も早く良くなりたいから』


『で どうなの?調子は?』


華子はニッコリ笑って

『少しずつ感覚が出てきたの それが嬉しくて』


『本当! 良かったね』


『うん 自分が こうなると普段歩いたり 走ったり 当たり前の普通の事がいかにありがたいか分かるの もう治らない人も世の中にはいる でも私は努力で治る可能性があるって だったらくよくよしないで頑張ってみるの』


強い。 心の中では 不安と やるせなさでいっぱいのはず しかし 信じて前向きの華子に邦夫は グッと胸を締め付けられた。


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