王様と黒猫
この国の国王様との、『御会食』という名の『お見合い』だったのだ。
一体何処からこんな大層なコネを引っ張ってきたのだろうか。
三十歳にもなる国王がいまだ婚姻はしておらず、后候補を探しているという噂は聞いたことがあった。だけどまさか自分にそれが回ってくるなんて。
でも相手が誰であろうとまだ、結婚する気なんて全く無い。むしろその席は、怒れる両親から受けた罰ゲームのようなものだと思っていたのだ。
とはいえ上手く立ち回っておかないと、また次の罰ゲームを追加される事になりかねない。私はとことん猫を被ってお上品になり、無難にこのゲームを終わらせてしまおうと考えていた。
しかし、事はそれ程簡単には終わらなかった。
誤算の一つは、陛下が大幅に遅れてきた事。
慣れないドレスを持て余してた私は、その長い待ち時間をじっとしている事に我慢が出来なくなっていた。
そしてもう一つの誤算は、城の中庭に迷い込んだ黒猫が、高い木の上に登ってしまい降りられなくなっているのを見つけた事。
その時私は、気の毒な黒猫を助ける事しか頭になかった。
あろうことか陛下の目の前で、いつもやっているようにドレスを捲り上げて木に登ってしまったのだ。
我に返った時はもう遅かった。
さらに最悪な事に私は木の上で手を滑らせてしまい、助けようとしていた黒猫もろとも陛下の上に落下するという大失敗までやらかしてしまった。