王様と黒猫
「あー…………いや、ちょっと違う。そういう事じゃない」
陛下も何かに考えを巡らせているようだった。
私に飛びついてきた『黒猫のシオン』はいつの間にかするりと腕から逃げ出し、花柄の高級そうなソファーの上で呑気にあくびをしている。
人の気も知らないで!
あんたを助けたのは私なんだから、ちょっとはこの訳のわからない状況から、今度は私を助けるとか考えなさい!
そう思って黒猫シオンを睨んだが、その思いは伝わるわけもなく。黒猫シオンは大きく伸びをしながらくつろぎ始めた。
「――――シオン」
長らく考え込んでいた陛下がまた突然私の名を呼んだ。
黒猫シオンを睨んでいたのが、ばれていないといいのだが。
「シオン、お前がじゃじゃ馬なのはもう知ってる。だから、変に上品ぶったり取り繕おうと慌てたりはしなくてもいい」
「は、はい……」
「そのままのシオンで、毎日顔を見せてくれ」
「毎日、ですか……?」
「……まあ、毎日というのは大げさだが、お前の都合がいい時に」
私には陛下の言わんとしていることが、全く分からなかった。
毎日お城へ来て、陛下に顔を見せ、それで……?
私はあきらかにぽかんとした顔をしてしまったのだろう。もう一度少し考えると、陛下は両腕を組んで言った。
「そう、あれだ! 簡単に言うと……俺と友達になってくれって、事だ!」
その子どもみたいな言い方に、私は思わず噴出してしまった。
私よりずっと大きな身体をして、きらきらとした金色の髪とブルーサファイアの瞳、そして整った顔立ち。年齢的にも遥かに年上で、国を治める国王様。