王様と黒猫
どのくらいの時間が過ぎたのだろうか。
ふっと目が覚めぼんやりした視界で窓の外を眺めると、日はもう大きく傾いてきていた。
熱はだいぶ下がっているようだ。あの熱が出た時独特の関節の痛みは無くなっていた。
そういえば、自分が眠っている間に……シオンは来たのだろうか。
まだぼんやりする頭でそんな事を考える。
「あの、陛下……お目覚めですか?」
突然自分の寝ているベッドの下のほうから、たった今考えていた彼女の声が聞こえてきた。驚いて起き上がると、ベッドのすぐ傍の床へ直接座った同じように驚き顔のシオンの姿があった。
「そ、そんなにいきなり起き上がって、大丈夫ですか?」
「……あ、ああ」
どうしてここにシオンが? いつからここに?
ああ、まだ頭が混乱している。
「あの……勝手にお部屋に入らせてもらってすみません。ジェイク様が、遠慮するなというものですから……それと、私のせいですよね、陛下が熱を出されたのは。申し訳ありません」
いつになく大人しく神妙な顔で、シオンはそう言った。
もしかしたらまた、昨日の事を父親にでも怒られたのかもしれない。反省した様子で俯く彼女が、可哀想だが可愛らしいくて愛おしかった。
「シオン、お前のせいじゃない。昨日は俺も楽しかった。だから別に誰も悪くない」
「でも……」
「今度はもっと身体を鍛えておくから」
そう言って笑ってやるとシオンはやっと顔を上げ、嬉しそうに頬を薔薇色に染めて微笑んだ。
俺の好きな、ピンクの薔薇色の頬。
彼女のそんな笑顔を見つめながら、俺はジェイクの言っていた言葉を思い出していた。