王様と黒猫
――――そろそろ先を考える、いい機会なのではないですか?
…………先、か。
周りの側近や執事、親しい者たちにも、アシュリーにも。とうとうジェイクにまで言われてしまった。
いい加減に先へ進めと。
別にこれまでも、足踏みをしていたわけではない。後ろを向いていたわけでもない。しかしあまりにも長い時間、待ち続けてしまっていた。
先へ進む何かが訪れるのを。
もう一度、シオンの顔を見つめる。彼女はその様子を不思議そうな顔をして見ていた。
「シオン」
「はい?」
「俺の事を………………どう思っている?」
「――――え?!」
直球過ぎるかとも思ったが、彼女の前ではどうもいい言葉が思いつかない。遠まわしに言う事が何故か出来ないでいた。
シオンはさっきより顔を真っ赤に染めて、また俯いてしまった。ドレスのスカートの裾をもじもじと手で弄っている。お転婆でじゃじゃ馬なのに、彼女は結構恥ずかしがり屋だ。
そんな所も可愛いと思う。
「……陛下の事は、楽しい方だと思っております。やさしい方だと……」
やがてポツリとシオンは言った。
まだ十八歳の少女に、俺は無理を言ってしまっているのだろうか。この俺でさえ迷ってしまう事なのに、彼女に期待をしてしまっている。
――――前へ進む為の何かを
「シオン、俺の事を信じていられるか?」
「え……?」
「この先何があっても、俺を信じてくれるか?」
シオンは一瞬俺と目を合わせたがすぐにまた俯いてしまい、黙ったまま何かをじっと考えている。