王様と黒猫
国王としての執務に翻弄されているうちに、俺もいつの間にか三十になっていた。

それなのにいつまでも結婚しないので、お世継ぎだとか何だとか、そんな名目で見合い話が定期的に舞い込んでくる。

月に一度、二週に一回。まだ結婚なんて頭の片隅にも想像していない俺にとっては、煩わしい事この上ない。


「前回は無理やり予定を入れられてキャンセルなさってますから、今回はどうされても逃げられませんよ」


そう言い切られ、ため息を吐きつつもう一度その写真を眺めた。

大きな黒宝石のような瞳、漆黒の髪。はにかむ様に微笑むその女性は、思っていたより美人のようだ。


「――――わかった。仕方ない、行けばいいんだろう?」


昨日から続く、この鬱々とした気持を晴らすには、いい目の保養になるかもしれない。そんな気まぐれな、軽い気持ちでそう答えた。

で、その『ごかいしょく』は何時からなんだ? と執事に尋ねると、


「――――もう、先方は応接の間で先程から陛下をお待ちです」


執事はあきれ果てたという声でそう返してきた。




















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