王様と黒猫
ジェイクには城内の方で同じように内密に調査をさせていた。

こっちの方はもう、尾ひれをつけて噂が一人歩きしているのは分かっていた。それでもそれがどのくらいまでというのを把握しておきたかったのだ。


「城内部ではほぼ全域に広まっていますね。知らないものはもう存在しないのではないでしょうか」


そこまで言うともったいぶって一度言葉を止め、こちらを向いてにやりと笑った。こいつが面白がっているのはみえみえだ。


「不満、意義を唱えるものはほぼ皆無。皆一様に、陛下と黒猫嬢に好意を持って祝福しているといったところです」

「そうか……」


ジェイクとフィリップの二人の報告を聞いて、やっと安心することが出来た。大きく息を吐いて、座っていたベッドに足を投げ出して身を沈める。


「で、どうしますか? 握りつぶしますか?」

「……まあ、悪意が無いのならこのままでも問題はないだろう。今無理に潰したとしても、逆効果だ」

「そうですか、では陛下のお心のままに……」


ジェイクの口元が面白げに、にやりと歪んでいた。


「……どうなさるおつもりなんですか? 黒猫嬢を城から遠ざけたり、こんな調査をしたり」

「…………」


こいつがこんな風に聞いてくるときは、たいてい俺の考えは分かっているはずだ。それなのにわざと何も知らないように問いかけてくる。

全く、底意地の悪さは昔から変わらない。




< 44 / 75 >

この作品をシェア

pagetop