王様と黒猫


「女性というものは、プレゼントなら何を貰っても嬉しいものですよ」

「ただのプレゼントならな……」


確かに彼女なら飴やガム、極端な話その辺の庭で拾った可愛らしい石ころでも喜んで貰ってくれるだろう。ドレスを捲り上げて木に登る、まるで黒猫の様な彼女――――シオンなら。

しかし今回は違った。三日後は一年に一度しかない、シオンの誕生日なのだ。

そんな日に、まさか石ころをプレゼントするわけにもいかないだろう。


「お前は知らないか? シオンが何を欲しがっているかとか、あいつの好きなものとか」

「そうですねえ……」


ジェイクはさっきから目を通していた書類にサインをしてまた別の書類を手に取る。視線はこちらには向けないが、まあ話は聞いているだろう。

聞いていないようで聞いている、こいつはいつもそういう奴だ。


「そういえばこの間、おやつに出たアイスクリームがかなり気に入ったようでしたよ?」

「アイスクリーム?」

「ええ、クリームがほんのりピンク色で薔薇の香りがしたとかで」

「……俺にそのアイスクリームを作れって言うのか?」

「陛下の手作りなら、喜ぶのではないでしょうか」


そう言ってジェイクはこちらに視線を流すと、おかしげに笑った。

自慢じゃないが生まれてこの方、俺は料理なんてした事が無い。それを知っているくせに、こいつはそんな事を言う。


「俺にアイスクリームが作れると思うか?」

「まあ、無理でしょうね。教える料理長が気の毒です」




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