王様と黒猫
それでもまさか剣をプレゼントしてやる事は出来ない。

その行為はシオンを、何とかお淑やかにしようと教育している御両親の顔に泥を塗る事になってしまう。自分も進んで型にはまる方では無いが、そんな両親の気持ちも分からなくはなかった。

可愛がって育てている娘が、自分の身長より大きな剣を振り回す姿なんて、目の当たりにはしたくないだろう。


「剣以外には無いか? そうだな、例えば……装飾品とかドレスとか」


何とか剣から注意を逸らそうとしてそう言ってみたが、かなり不自然だったかもしれない。シオンは不思議そうな顔をして俺を見ていた。


「そうですね、ドレスや装飾品にはそれ程興味はありませんが……」


ああ、やはり剣を贈るしか無いのだろうか。

がっくりとしていると、彼女は言葉を続けた。


「この季節に咲く、あの花が好きです」


シオンはやはり赤くなりながら俯いている。花か――――花ならプレゼントに良さそうだ。


「何の花が好きなんだ?」

「…………ひ、ひまわり、の花です」




ひまわり――――黄色くてでかくて夏の太陽みたいな花。




数ある煌びやかな花の中で、真っ直ぐに大きく咲き誇るひまわりを選択した所が、なんともシオンらしくてまた笑った。やっぱり言ったら陛下には笑われると思っていました、と彼女は赤くなりながらそんな可愛らしい事を言うと、少し溶け始めた薔薇のアイスクリームを口に運んだ。

その様子を見ながら俺はシオンへのプレゼントを何にするか、やっと決める事が出来たのだ。




















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